「リンパ浮腫」は乳がんや婦人科癌、泌尿器科癌術後に発生する、 二次性リンパ浮腫と先天的なリンパ管形成不全、 機能不全によっておこる一次性（原発性）リンパ浮腫があります。 その他にも「リンパ浮腫」ではない病態によって、リンパ浮腫に類似した臨床像を示す疾患があります。 原因疾患は多岐にわたるため、まず、心・血管系、腎、代謝、内分泌系の精査を施行した後、ICGリンパ管造影を施行し、診断を確定します。 当院には循環器、消化器、腎臓、がん治療の専門医が在籍しており、それぞれの病態に合わせて治療が可能です。 それでも確定診断が困難な症例で、リンパシンチが必要な症例は、施行可能な施設に紹介します。 二次性リンパ浮腫でも、一次性（原発性）リンパ浮腫でも、治療法は共通で、従来の弾性包帯や弾性着衣による圧迫療法に加え、 適応症例には手術療法も施行し、治療効果を高めます。
リンパ浮腫は難治性疾患ですが、すべての治療を集学的に行うことが必要で、その結果、著明な改善をみる症例も少なくありません。

当院では、各種弾性包帯や弾性着衣を取りそろえており、専属のスタッフが、フィッティングを行います。 圧迫材料は、患者様の筋力や活動量、生活スタイルによって最適な材料が異なります。患者様の情報を元に最適な圧迫材料を選定します。
    ・SIGVARIS
    ・JOBST
    ・medi
    ・Limfix
    ・その他

顕微鏡下にリンパ管静脈吻合を行います。傷は2cm程度で、小さく目立たず、合併症もほとんどないため、患者様に非常にやさしい手術と言えます。 局所麻酔に加え、静脈麻酔も併用することで、苦痛を感じることなく、手術することが可能です。 基本的に日帰りで手術が可能ですが、希望される患者様には提携病院で入院して手術が可能です。
残念ながら、手術自体はリンパ浮腫全例に有効な治療法ではありませんが、 集学的治療を施行することにより、後述するような、著効症例も経験します（下図参照）。 リンパ管の硬化や変性が強い場合、皮下脂肪を切除する手術を施行することもあります。 上肢のリンパ浮腫症例は圧迫療法を離脱できました。 双方とも初診時、蜂窩織炎を合併していましたが、術後は現在のところ、蜂窩織炎の発生はありません。

＊ICGリンパ管造影について：インドシアニングリーンという色素を少量皮下注射し、PDEという赤外線カメラで観察します。 正常では線状に見えますが、広範に広がる白色部位は、リンパの漏れを示します。

当院には、Vodder式リンパドレナージュのセラピストが常駐しており、適応症例にはリンパドレナージュを施行しています。 他の治療法との組み合わせで治療効果を高めます。 保険適応ではありませんので、別途料金が必要です。

術前や手術を希望されない患者様に行うことがあります。 外来で施行する場合は、各種弾性包帯、弾性着衣を用いて行います。 着用方法を習得されるまでは、頻回の通院で施行します。 希望される症例は、提携病院へ入院の上、集中排液を行います。 入院は、基本的に7-14日の入院で行います。 バンテージ、ストッキングやスリーブの弾性着衣に加え、リハビリテーションと薬物療法を組み合わせて治療します。 医師、看護師、理学療法士、作業療法士、薬剤師でチームを形成し、連携して治療にあたっており、高い治療効果が望めます。